2025年8月10日、14時33分。葉山ステーションでコロッケを買い、葉山マリーナのマーロウで昼食をとって、その足で向かったのがこの日の宿だった。葉山町堀内、森戸海岸にほど近い住宅地の一角にある一棟貸しの宿「&MOON Noa(アンドムーン ノア)」。家族で一泊した。
先に結論を書いておくと、この宿でいちばん覚えているのは、海でもテラスでもなく寝室が映画館だったことである。
玄関を入ると、まず階段

14時37分、玄関。グレーの石タイルを敷いた土間があって、右手にすぐ木の階段が上がっている。正面には装飾の入った白い扉、脇の小さな丸テーブルに観葉植物が一鉢。ホテルのフロントのような場所はもちろんなくて、鍵を開けて入った瞬間から、もう「自分たちの家」になる。
建物は縦に長い。1階から3階まで、階段で移動する構造になっている。荷物を持って上がるのは少し手間だが、そのぶんフロアごとに役割がはっきり分かれていた。
長いテーブルのあるリビングダイニング

14時36分。リビングダイニングは、白い壁と明るい木の床でまとめられた、まっすぐな空間だった。中央に置かれた木の一枚板のような長テーブル。椅子は片側に3脚以上並べられていて、6人でも余裕がある。
奥にはブラウンのレザーソファ。壁には円形にくり抜かれたような照明つきのアートが掛かっていて、そこに海辺の風景が入っている。小窓が三つ並んだ側にはタッセルでまとめたカーテン。天井から下がるのは、少しレトロな形のペンダントライト。
写真の右端に、着いたばかりのスーツケースが写っている。この時点ではまだ何も始まっていない。
キッチンが、思っていたより本気だった

一棟貸しの宿でいちばん差が出るのはキッチンだと思っている。ここは、かなり良かった。
モルタル調のカウンターに対面式のシステムキッチン。大きなステンレスの冷蔵庫、電子レンジ、オーブン、コーヒーメーカー。シンクの水栓はホースが引き出せるスプリングタイプ。そして何より、カウンター下の開放棚にグラスと皿がきちんと数を揃えて並んでいる。
「一応キッチンもあります」ではなく、ここで作って、ここで食べることを前提に設計されている。買い出しをして自炊するタイプの滞在なら、この宿はかなり強い。
3階のスカイテラス

14時33分、いちばん最初に撮っていたのがここだった。3階のスカイテラス。テラコッタ色のタイルが敷かれた屋外空間で、屋根と壁に囲われているぶん、テラスというより中庭に近い。
この日は着く直前まで雨が降っていたようで、タイルがまだ濡れて光っていた。空は一面の雲。それでも壁の切れ目の向こうに、葉山の低い屋根並みと、その先の海が見える。
置いてあるのはBBQグリル(カバーがかかったまま)、金属の作業台、ベンチ、大きな植木鉢。ここで焼いて、そのまま食べられるようになっている。

同じテラスを別の角度から。黒いデッキチェアが2台、ラタンのローテーブル。壁はターコイズブルーに塗られていて、天井には木の梁が見える。
そして面白いのが、テラスに面してガラスの折戸があり、その向こうが洗面台とシャワーになっていること。洗面ボウルが2つ並んでいる。風呂上がりにそのままテラスへ出られるという動線で、これは家では絶対に作れない。
そして、寝室が映画館だった

14時39分。3階まで上がって扉を開けたときが、この滞在のピークだった。
部屋の一面が、まるごとスクリーンなのである。低い台の上に白い寝具のベッドが2つ並んでいて、その頭側の壁に大型のスクリーンが埋め込まれている。ベッドの土台の足元と、スクリーンの両脇の柱に、あたたかい色の間接照明が仕込まれていて、それがぼんやりと部屋の輪郭を作っている。
手前には白い大きなソファと、丸いラタンのソファ。低い木のテーブル。床は石目調で、ひんやりしている。
この部屋で、家族で映画を観た。
椅子に座って観るのではない。ベッドに寝転がったまま、真上に近い位置に大画面があるという状態で観る。照明を落とすと、部屋の中で光っているのはスクリーンと足元の間接照明だけになって、本当に映画館の中にいるみたいだった。
しかも自分たちしかいない。音量を気にする必要も、途中で飲みものを取りに行くのを我慢する必要もない。冷蔵庫は1階だから階段を降りることになるけれど、それすら含めて「家を借りている」感じがして楽しかった。
旅先の宿で「部屋がよかった」と思うことはよくある。でも「この部屋のためにもう一度来てもいい」と思ったのは久しぶりだった。
この滞在のメモ
- 宿泊日:2025年8月10日(日)〜11日(月)、家族で1泊。チェックインは14時半すぎ。
- 宿:&MOON Noa(アンドムーン ノア)/神奈川県三浦郡葉山町堀内905-5。森戸海岸にほど近い一棟貸し。
- 定員:最大5名。主寝室は18帖でダブルベッド2台+シアタースクリーンとソファセット、3階にクイーンベッド1台の寝室(公式の施設情報より)。
- 構造:1階から3階までの縦長。階段の上り下りが多いので、小さな子ども連れや大きな荷物がある場合は覚悟しておくといい。
- キッチン:対面式システムキッチン、3口IH、電子レンジ、冷蔵庫・冷凍庫、調理器具一式。自炊前提で組める。
- スカイテラス:3階。海まで見渡せて、デッキチェア2台、BBQも可能。屋根があるので多少の雨なら使える。
- シアタールーム:主寝室が大型スクリーン付き。この宿の主役はここ。観たい作品を事前に決めて、配信サービスにログインできる状態にしておくと無駄がない。
- 買い出し:葉山ステーションが車ですぐ。旭屋牛肉店の葉山牛やコロッケ、地元の野菜を買って持ち込むのがいちばん贅沢な使い方だと思う。
- 料金:時期・人数で大きく変わるので、予約サイトで確認を。
葉山は、海に行くための場所だと思っていた。でもこの日は、雨あがりの曇り空で、海にはほとんど近づいていない。それでも十分に満ち足りた一日だった。コロッケを車の中で食べて、マリーナでプリンを食べて、最後は寝室の映画館で寝落ちする。そういう葉山の過ごし方もある。
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