ターティアンという船着き場で降りると、二つの寺が両側にある。川を渡った先にワットアルン、降りた岸にワットポー。この日の午前は、その二つを歩いた。

九時十七分、階段を見上げる
ワットアルンの塔の下に立って、まず思ったのは「これを登るのか」だった。
階段が急だ。段の奥行きが浅く、手すりを掴まないと上がれない角度がついている。塔の表面は無数の陶片で覆われていて、近づくとひとつひとつが花の形をしているのが分かる。遠くから見ると白い塔だが、実際は細かい色の集合だった。
階段の下には、注意書きの看板が立っている。タイ語、韓国語、中国語、ドイツ語。スリに気をつけろ、という内容が並んでいた。世界中から人が来る場所なのだと、この看板だけで伝わってくる。

名前は、夜明けの神から来ている
ワットアルンは日本語で「暁の寺」と呼ばれる。名前はヒンドゥー教の神アルナに由来していて、そこから夜明けの象徴とされている。
寺そのものは少なくとも十七世紀から存在していた。いま目の前にある特徴的な塔が建てられたのは十九世紀の初め、ラーマ二世の時代だ。ラーマ一世が完成を見ずに亡くなり、次の代が引き継いで仕上げ、そのときに「ワット・アルン・ラーチャワララーム」という名前になった。
二〇一三年から二〇一七年にかけて大規模な改修が行われている。私が見た白さは、その後の白さということになる。
十一時二十分、四十六メートルの仏に会う

川を戻ってワットポーへ入ったのは、十一時二十分すぎだった。
堂に入ると、視界が全部埋まる。横たわった仏像の全長は四十六メートル、高さは十五メートル。近すぎて全体が見えないので、頭から足まで歩いて確かめることになる。
見どころは足の裏だ。螺鈿細工で百八の図が描き込まれていて、仏教の世界観を表しているという。金色の巨体の端に、細かい仕事が一面に詰まっている。大きさで驚かせておいて、最後に細かさで見せる構成になっている。
タイで最初の大学だった
この寺はラーマ一世が僧の学びのために建てた王室寺院で、ラーマ三世の代に改修された。そのとき、さまざまな分野の学術書の内容を寺のまわりに刻み込んだのだという。人々に知識を広めるためで、そのためタイで最初の大学と考えられている。
医学の府でもあった。タイ古式マッサージの総本山とされているのはそのためで、いまも敷地内でマッサージを受けられる。
観光地として有名な涅槃仏の裏に、学校としての歴史がある。石に文字を刻んで残そうとした人たちのことを考えると、寺の見え方が少し変わった。
この日のメモ
- どちらもターティアン船着き場(N9)から行ける。ワットポーは船着き場からすぐ、ワットアルンは川を渡った対岸
- ワットアルンの塔の階段はかなり急。手すりを掴んで登ることになる
- 塔の表面は陶片で覆われている。近づくと花の形をしているのが分かる
- 名前はヒンドゥー教の神アルナに由来。塔は19世紀初頭ラーマ2世の時代の建立
- ワットポーの涅槃仏は全長46m・高さ15m。足裏は螺鈿細工で108の図
- ワットポーはタイ最初の大学とされ、タイ古式マッサージの総本山でもある
- この日は午前九時過ぎから十一時半ごろにかけて回った
- 拝観時間・料金・服装の規定は変わることがあるので、現地で確認を
この日はフェリーで川を渡って来ました。あいだにマンゴー専門店に寄り、昼はアイコンサイアムでパッタイを食べています。
※2025年8月訪問。拝観情報は訪問時点のものです。
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