金閣寺の写真を撮って、あとから見返して気づいたことがある。金閣は「全部金」ではない。いちばん下の階だけ、金箔が張られていない素木のままだ。現地では逆光と反射に目を奪われて気づかないが、写真にははっきり写っている。

三層それぞれが別の様式でできている
金閣(正しくは鹿苑寺の舎利殿)は三層構造で、階ごとに建築様式が違う。
- 初層「法水院(ほっすいいん)」— 寝殿造。公家の住宅の様式。金箔は張られていない
- 二層「潮音洞(ちょうおんどう)」— 武家造。ここから金箔が始まる
- 三層「究竟頂(くっきょうちょう)」— 禅宗仏殿造。内外とも金箔で、屋根の頂に鳳凰が立つ
公家・武家・禅という三つの文化を下から積み上げた建物で、これが北山文化と呼ばれる折衷そのものだ。写真で下層だけ色が違って見えるのは劣化でも影でもなく、最初からそう造られている。この一点を知っているだけで、目の前の建物の見え方が変わる。
目の前にあるのは1955年の建物
もうひとつ、現地の案内では意外と流されがちな事実。現在の金閣は1950年の放火で全焼し、1955年に再建されたものだ。さらに1987年、漆の塗り直しと金箔の全面張替えが行われている。
つまり室町時代の建物を見ているわけではない。三代将軍・足利義満が北山第を営んだのは14世紀末だが、いま池の向こうに立っているのは戦後の再建だ。それでも様式と配置は忠実に写されているので、「義満が何を見せたかったか」は変わらず読み取れる。がっかりする話ではなく、見る対象を正確に把握するための前提だと思っている。
逆さ金閣が撮れる条件は「無風」
写真では水面に金閣がほぼ完全に映り込んでいる。これは腕ではなく条件で、鏡湖池の水面が乱れていないときにしか起きない。風が少しでもあれば反射は崩れる。
撮影したのは冬。フレーム上部に張り出している枝は葉を落とした落葉樹で、周囲の松だけが緑を保っている。冬は空気が澄んで金色のコントラストが強く出るうえ、朝は風が弱い日が多い。逆さ金閣を狙うなら冬の朝いちばん、というのが写真から言えることだ。
順路は一方通行 — 立ち止まれる場所は限られる
金閣寺の拝観順路は一方通行で、引き返せない。そして写真のこの角度——鏡湖池の対岸から金閣を正面に見る位置——は、入ってすぐの区間にある。
つまり、入場して数十メートルで最大の見せ場が来る。ここで人の流れに押されて素通りすると、二度目のチャンスはない。入口で急がず、最初の池畔で時間を使うのが正しい歩き方だ。逆にその先の道は道なりに進めばよく、所要は全体で30〜40分ほど見ておけば足りる。
基本データ
- 正式名称:鹿苑寺(ろくおんじ)。金閣は境内の舎利殿
- 拝観時間:9:00〜17:00
- 拝観料:一般 500円/小・中学生 300円(2023年に400円から改定。1993年以来30年ぶりの値上げ)
- 住所:京都市北区金閣寺町1
- アクセス:市バス 204・205系統/12・59系統「金閣寺道」下車
- 世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産(1994年登録)
まとめ
金閣寺は「金色の建物を見に行く場所」として消費されがちだが、実際に写真に残るのは金箔が二層分しかない、様式の違う三階建てという、もっと具体的な事実だ。行く前にこれを知っていれば、池畔で見るものが変わる。
そして池に映る姿を狙うなら、冬の、風のない朝。それだけ決めて行けばいい。
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