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「箱」は作れても「中身」は作れない。Big4コンサルタントが直面した、法人設立の容易さと商いの非対称性

Private Business

「コンサルタントは、答えのない問いを解くのが仕事だ」とよく言われます。
私は現在、いわゆるBig4(ビッグフォー)と呼ばれるコンサルティングファームに身を置いています。異業種からこの世界に飛び込んで約6年。当初はロジカルシンキングの鋭さに圧倒されたものですが、今では「解けない難題」に出会うと、むしろ知的好奇心が刺激される体質になってしまいました。

そんな私が、クライアントワークとは別に、個人的な実験として「自分の法人」を持ったのは数年前のことです。
特段の崇高なビジョンがあったわけではありません。「資本主義の仕組みを、身銭を切って理解したい」。そんなシンプルな動機でした。

しかし、実際に法人という「箱」を作ってみて痛感したのは、「起業(箱を作る)」と「商い(中身を作る)」の間にある、残酷なほどの非対称性でした。

今回は、Private Businessカテゴリの序章として、私がこのプライベートな実験室で何を感じ、何に苦悩しているのか、その等身大の記録をお届けします。

「起業」はコモディティ化している

まず、ファクト(事実)から整理しましょう。
日本において、法人を作ることは驚くほど簡単です。

私が設立を検討した際、最初に行ったのは「株式会社か、合同会社か」という典型的なリサーチでした。
Googleで検索すれば、設立費用の違い(株式会社は約20〜25万円、合同会社は約6〜10万円)、社会的信用の差、決算公告の義務など、比較情報は無限に出てきます。
私は自身の資産管理と小規模事業の運営が目的だったため、コストパフォーマンスと意思決定のスピードを重視し、自分なりの結論を出しました。

手続き自体も、今はオンラインで完結します。定款を作り、公証役場の認証を受け(合同会社なら不要)、法務局に登記申請をする。
これらはすべて「作業」であり、そこに高度な判断やクリエイティビティは必要ありません。

生存率という数字の罠

世間ではよく「起業の生存率は低い」と言われますが、統計を見ると少し景色が変わります。
ある調査によると、日本における起業5年後の生存率は約81.7%というデータもあります。これは欧米に比べても高い水準です。
しかし、これをもって「日本でビジネスを続けるのは簡単だ」と結論づけるのは早計です。

日本の廃業率が低い(約3〜4%)のは、単に「儲かっていないが、潰してもいない」という、いわゆる休眠状態や低空飛行の企業が多く滞留していることを示唆しているに過ぎません。

私が直面したのも、まさにここでした。
「箱」を作るのは簡単だ。潰さないのも(赤字を垂れ流さなければ)難しくない。
本当に難しいのは、「その箱を使って、利益を生み出し続けること」だけなのだ、と。

コンサルタントが陥る「事業の空白」

法人設立後、私はいくつかの事業(=箱の中身)を詰め込み始めました。

  1. 不動産・金融投資:これは「資産管理」の側面が強く、ある種の不労所得ですが、市況に依存します。
  2. SNS事業:情報発信によるメディア構築。
  3. 物販事業(Amazon販売):商品を仕入れ、在庫を持ち、販売する実業。
  4. Kindle出版:自身のナレッジ(ブログ記事等)の資産化。

ここで興味深いのが、本業であるコンサルティング業務とのギャップです。
コンサルタントとして私は、クライアントに対して「戦略」や「あるべき姿」を提言します。そこには論理があり、美しいフレームワークがあります。

しかし、自分のビジネス(特に物販やSNS)では、その「美しさ」が通用しない局面に多々遭遇します。
「論理的に正しい商品」が売れるとは限らない。
「完璧なSEO対策」をした記事が読まれるとは限らない。
Amazonのアルゴリズム変更一つで、昨日までの正解が今日の間違いになる。

特に物販事業における「在庫リスク」と「キャッシュフロー」の重みは、パワーポイント上で数字を動かしているだけでは決して理解できない、泥臭い現実でした。Big4での経験が活きる部分もあれば、むしろその「綺麗すぎる思考」が邪魔をする瞬間さえあります。

Private Wisdom的教訓:静かなる実験室を持つ意味

昨今、コンサルティング業界でも人材の流動性が高まり、副業やパラレルキャリアを模索する人が増えています。
その中で、私が自身の法人を持つことの意義を一つ挙げるとすれば、それは「自分だけの実験室(ラボ)を持てる」という点に尽きます。

誰の承認もいらない。予算の制約もない(自分の財布が許す限り)。
成功すれば自分の手柄、失敗すれば自分の痛み。
このヒリヒリするような「自己責任の純度」こそが、大人のビジネスパーソンにとっての、ある種の「Quiet Luxury(静かな贅沢)」ではないでしょうか。

利益こそが、最も厳しい規律

法人である以上、利益(Profit)を出さなければなりません。
それは強欲さからではなく、市場から「その事業には価値がある」と認められた唯一の証拠が利益だからです。

「起業したい」という言葉をよく耳にしますが、もしあなたがそれを目指すなら、私はこう問いたいと思います。
「あなたは、どんな箱を作りたいですか?」ではなく、「あなたはその箱で、誰にどんな価値を提供し、どうやって利益という対価を得ますか?」と。

結論:これからのPrivate Businessについて

私の法人はまだ、偉そうなことを言えるような規模ではありません。
不動産や金融で守りを固めつつ、物販や情報発信で攻める。そのバランスの中で、日々小さな失敗と修正を繰り返しています。

今後、この「Private Business」のカテゴリでは、私がこの実験室で得た具体的なデータ、失敗談、そしてコンサルタントの視点で分析した「商いの原理原則」を書き記していこうと思います。
Kindle出版のプロセスや、Amazon物販の舞台裏など、普段の「Private Wisdom」の優雅な記事とは少し違う、汗と数字のにおいがする記録になるはずです。

それらが、同じように「自分の足で立ちたい」と願う読者の皆様にとって、ささやかながらも実用的な「叡智」となることを願って。

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